青山学院大学のさわでぃーKOPです!「心はスカウサー」と誇りを胸に、リヴァプールFCの魅力をお届けするこの連載が始まります。赤く燃えるアンフィールドの情熱、歴史が刻む数々の栄光、そして選手とファンが織り成す物語。その全てに愛情と敬重を持って紡いでいきたいと思います。
フットボールは対立だけでなく、調和と共有の場でもあります。リヴァプールだけでなく、すべてのチームが持つ美しさや努力に敬意を払いながら、この連載を通じてフットボールの素晴らしさを分ち合えれば幸いです。
『You'll Never Walk Alone』---この言葉を胸に、共に新たな旅路に出発しましょう。
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試合の始まりを告げる笛が鳴った瞬間、いったい誰が90分後に映るスコアボードの表示を予想できたでしょう?
本稿では3月5日、パリのパルク・デ・フランスにて行われたチャンピオンズリーグ・ラウンド16 リヴァプール 対 パリ・サンジェルマン(以下 : パリ)の一戦を振り返っていきます。

ラウンド16の注目のカードであり、互いに圧倒的な火力の攻撃陣を誇る強豪対決は下馬評に反してパリの一方的な展開で幕を開けました。直近10試合で実に40ゴールをあげているパリの主砲、デンベレ、バルコラ、クヴァラツヘリアの前線3枚を中心とするボール保持によりチーム全体で前進するパリが試合の主導権を握る展開の中、前半20分、コーナーキックからパリが先制ゴールをあげることに成功!芸術的なコントロールショットを沈めたクヴァラツへリアのゴールでしたが、残念ながらオフサイド判定により取り消されます。それでもこのゴールを皮切りにパリの攻撃は一層鋭さを増していきます…。

30分にはアレクサンダー=アーノルドをひらりと躱したバルコラがカットインでスペースを拓き、そこに走りこんだデンベレへすかさずパス。ゴール端へ流し込もうとするデンベレのシュートはブラジル代表の正GKを務めるリヴァプールの守護神アリソンが素晴らしい詰めから見事にセーブ。こぼれたボールからゴールを狙ってシュートを放つパリでしたが、8番ソボスライのシュートブロックもあり、リヴァプールは何とか難を逃れました。
42分にはファーサイドに打つフェイントをかけてニアサイドへ強烈なシュートを放ったクヴァラツへリアの前には、またしてもアリソンが立ちはだかります。
パリにとっては歯がゆく、リヴァプールにとっては苦しかった前半が終わった時点でパリが12本シュートを放っていたのに対し、リヴァプールは1本たりともシュートを放てず。チームの攻撃の核であるモハメド・サラーがラマダン(断食)中ゆえと思われる不調、散見されたパスミスなど、反省点をどっさり抱えてロッカールームへ引き返す前半となりました。

それでも、リヴァプールファンの多くは絶望していかっただろうと確信を持って言えます。それはなにも諦めることを固辞するチームの”You will never walk alone”精神からくる虚勢ではなく、リヴァプールを率いる就任一年目のアルネスロット監督が「めっぽう後半に強い」からです。後半での修正力が高い、と評されるスロット監督ですが具体的に「修正力」とはなんなのでしょうか?戦術の分析・熟成、チームの選手のコンディション管理など様々な要素が挙げられますが、本稿では「交代策の的中度」に言及していきます。
スロット体制下のリヴァプールは交代選手が多くの得点に関与しており、2024年時点では交代選手のみで30ゴールに絡む活躍を見せています。1月19日のブレントフォード戦は交代策の巧みさが特に強く印象に残った試合です。65分に投入されたダルウィン・ヌニェスがアディショナルタイムの91分、93分で立て続けにゴールを決めたことでスコアレスドローでの終幕と思われた試合で白星をあげることに成功しました。スロット監督の的確な采配が後半でのパフォーマンス向上に強い影響を与えていることは明らかなのです。そのため、この試合でもレッズ(リヴァプールファン)は自信を持って後半への期待を抱くことができました。

そんな後半へ懸けられた期待とは裏腹に依然としてリヴァプールは劣勢を強いられます。62分、77分に致命的なチャンスを作られるも、いずれもキーパーアリソンがスーパーセーブを披露し失点を許しません。79分には日本代表キャプテン、遠藤航が投入されいよいよ試合を締める時間帯に入ってきました。86分にはサラーに替わり、同ポジションを務めるユース出身のハーヴィー・エリオットが投入されました。展開が大きく動いたのは、彼が入って間もなくのことでした。
87分、アリソンが蹴り出したロングボールをパリのキャプテンであるDFマルキーニョスとの競り合いを制して収めた途中投入のヌニェス。ゴールの正面に立つ彼から失点の危機を察知し彼の前に集まる4人のパリの選手たち。しかし、既に彼の眼にはDFの姿は映っておらず、視界に捉えたのは右から走り込む投入されたばかりのエリオットでした。フリーでボールを受けたエリオットが、その日の彼のファーストタッチとなるシュートを思い切りゴール左端へズドン!と突き刺します。彼のゴールで以て、リヴァプールは絶望的な劣勢から起死回生のゴールに成功したのです!
試合終了のホイッスルが鳴り、スコアボードには0-1の数字が表示されました。
放たれたシュート総数、実に27本。そのうちゴールマウスを捉えた数、10本。
しかしサッカーの不条理が体現し、第一戦の勝利はリヴァプールの手に渡ったのです。

リヴァプール対パリ・サンジェルマンの試合を観て、二つの格言を私は思い浮かべました。
◎「強いチームが勝つのではない。勝ったチームが強いのだ」
フランツ・ベッケンバウアー(西ドイツのサッカー選手、「皇帝」の異名)
◎「勝利は最も忍耐強い人にもたらされる」
ナポレオン・ボナパルト(フランス皇帝)
これらの格言には、いくつかの興味深い共通点があります。
場所: フランスの地で行われたサッカーの試合
称号: 両者とも「皇帝」と呼ばれた人物の言葉
自由の概念:
ベッケンバウアー: リベロというポジションを確立し、サッカーに「自由」をもたらした
ナポレオン: ヨーロッパに「自由」主義の種を蒔いた
これらの繋がりは単なる偶然なのでしょうか。私には、この試合に残酷でありながらもロマンを愛するサッカーの神が宿っていたかのように感じられました。リヴァプールは劣勢を耐え忍び、最後の最後で勝利をつかみました。この試合は、サッカーの本質と人生の真理を同時に示してくれた、稀有な瞬間だったのかもしれないと、私は感じています。
果たしてリヴァプールの本拠地、アンフィールドで行われる2ndレグにはどのようなドラマが待っているのでしょうか。次の一戦も、見逃せません。